生前贈与に関するQ&A
生前贈与とは何ですか
A.相続が発生する前、被相続人の生前に自身の財産を贈与する行為です。
生前贈与は被相続人の意思で財産を渡すことができるので、「贈与額や贈与相手を自由に選べる」「死後に親族間のもめ事を回避できる」等のメリットがあります。
また、相続税を軽減する手段としても用いられます。相続税は相続開始時の財産額に応じて課税されるので、それ以前に財産を渡しておけば課税対象が少なくなり、税額を軽減できるのです。
国としても「次の世代に早期に資産を渡すことで経済効果も生まれる」ことを見込んで、生前贈与に対する様々な優遇措置を設けています。
生前贈与にも税金がかかりますか?
A.非課税枠を超えた場合に贈与税を支払う必要があります。
生前贈与には非課税枠が決まっています。例えば、一般的に生前贈与と言えば「暦年贈与」で、これは1年間に贈与する財産が110万円までであれば非課税となりますが、もしその額を超えるような贈与をした場合は贈与税が発生します。
贈与税は相続税と税率が異なり、高めに設定されています。
贈与税は誰がいつまでに納めますか?
A.贈与税の申告と納付期限は、贈与があった翌年の2月1日から3月15日までです。
贈与税の申告は贈与があった翌年の2月1日から3月15日までで、納付も同期限までに行う必要があります。また、贈与税の納税義務を負うのは、贈与をされた側=受贈者となります。
もし、非課税枠を超える金額の贈与があった場合は、超過分について申告と納付を行います。
申告をしなかったり、申告漏れがあった場合は、罰則が科されるので注意してください。
生前贈与で気をつけるべき点はありますか?
A.正しい方法を取らないと贈与税が発生します。
生前贈与(暦年贈与)では非課税枠内であれば、税務署などへの手続きは不要です。
ただし、やり方を間違えると、後に課税されてしまうことがあります。例えば、毎年110万円ずつ同じ時期に贈与を行っていると、「定期贈与」と見なされて贈与税を支払うことになってしまう場合もあります。
生前贈与の種類は暦年贈与だけですか?
A.相続時精算課税という制度もあります。
相続時精算課税制度とは生前贈与の一つで、年間110万円まで非課税となる暦年贈与と同じく、一定の非課税枠が設けられています。
非課税枠が合計2,500万円と高額なため、お得なイメージを受けますが、相続が始まると「贈与財産は相続税の対象になる」というルールもあり、活用に注意を要する内容になっています。
正しい生前贈与の方法を教えてください。
A.贈与の成立要件をよく理解しておくことが大切です。
生前贈与の成立には「渡す側と受け取る側とお互いの合意」「受け取った側が財産を自由にできること」「贈与契約の証拠があること」の要素が不可欠です。
これらの成立条件をきちんと踏まえつつ、正しい方法で行わなくてはなりません。
贈与後すぐに相続が始まると贈与がなかったことになると聞いたのですが…
A.相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されます。
贈与をしてから3年以内に贈与者が亡くなられた場合、贈与契約自体が無効とされ、受け取った財産は相続で得た物となります。これを「生前贈与加算」と言います。
このルールは、相続税対策のために被相続人が亡くなる直前に過剰な贈与が行われることを制限する役割があります。生前贈与にはこのような部分もあることに十分留意しておきましょう。
生前のうちにできるだけ妻に財産を渡したいのですが…
A.生前贈与における配偶者特別控除を利用しましょう。
「生前贈与における配偶者特別控除」とは贈与する財産が、受贈者が住むための不動産であったり、住居購入を目的とした資金の場合、最大2,000万円まで非課税になる制度です。
受贈者と贈与者の関係が婚姻歴20年以上の夫婦とされるため、「おしどり贈与」とも呼称されています。
孫のために教育費を渡したいのですが…
A.教育資金一括贈与の特例を利用しましょう。
子供や孫のために、教育費を援助したいと考える方は多いでしょう。
そんな時に使えるのが、「教育資金一括贈与の特例」という制度です。同制度は生前贈与の特例の一つで、教育資金の贈与であれば1,500万円まで非課税にできるのです。
適用期限は2013年4月1日から2021年3月31日までとなっているので、活用を検討しているのであれば、期限を過ぎないように注意してください。
下宿する孫に仕送りをしたいのですが、これも贈与税の対象になるのでしょうか?
A.扶養義務者からの都度贈与は非課税です。
「扶養義務者」とは、受贈者において配偶者や直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)、裁判所で扶養義務者として決められた三親等内の親族、三親等内親族で同一生計の人を指します。
つまり、夫から妻や祖父母から孫へ、必要な生活費や教育資金を渡しても非課税になるのです。
贈与者が亡くなってから成立する贈与があると聞いたのですが…
A.贈与の一種に死因贈与というものがあります。
死因贈与は贈与の一種で、贈与側の死亡を起因として行われる贈与行為です。
贈与でありながら、受贈者が取得した財産には贈与税でなく相続税が課税されます。
定期贈与と連年贈与は何が違うのですか?
A.事前に合計額の取り決めがあったかどうかです。
定期贈与と連年贈与に共通する事項は「毎年贈与を行う」ことで、異なる点は「事前に合計額の取り決めがあったかどうか」です。
定期贈与では契約時に「定期金をもらう権利」を受けたとして、契約年にその合計額に対して贈与税が課税されてしまいます。
孫に結婚資金を渡したいのですが…
A.結婚・子育て資金の一括贈与があります。
生前贈与には、要件を満たすことで非課税枠が高額となる特例がいくつかありますが、その一つに、「結婚・子育て資金の一括贈与」という制度があります。
一括で高額の資金を渡せますが、条件次第では高額の贈与税がかかるので、利用については十分な検討が必要です。