自筆証書遺言の作成方法について
遺言書の作成の際には、法律上のルールに従わなければなりません。
せっかく時間をかけて作っても、成立要件が守られていないと無効になってしまいます。
特に自筆で書くことを要求される「自筆証書遺言」は間違いが多いとされています。
このページでは自筆証書遺言の作成方法や具体的手順についてまとめていますので、ご家族に遺言を残そうと思っている方は参考にしてください。
自筆証書遺言とは
(1)特徴
自筆証書遺言とは遺言書の一種で、その名の通り自筆で遺言書を作成する方法です。
紙とペンがあれば作成できること・費用がかからないこと、等から最も手軽な作成方法と言えます。そのため、今日で最も多く利用されています。
ただし、手軽な反面、書き間違いが起こりやすく無効になるケースも多いのがデメリットです。また、紛失のリスクも高いのが難点です。
(2)検認が必須
自筆証書遺言書は、相続の際に家庭裁判所で「検認」を受ける必要があります。
検認とは、相続人に遺言の存在や内容を知らせること、また遺言書が偽造や変造されていないかを確認するための手続きです。よく勘違いされますが、検認がされてもその遺言書自体が有効であることにはなりません。
申し立ては遺言書の保管人や遺言書を発見した人が行います。検認前に中身を開封した場合は、5万円以下の罰金が課されるので注意してください。
なお、誤って開封されても遺言書自体は無効にならず、検認は通常通り行われます。
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言の成立要件は下記の通りです。
- 本文を自筆で書くこと(財産目録はパソコンで作成可能)
- 日付を書くこと
- 署名・押印があること
これらすべての要件を満たす必要があり、一つでも欠いてしまえば無効となってしまいます。
自筆にあたって、用いる筆記具等は自由ですが、長期に保管することを考えると、紙は高品質・高耐久のものを、筆記具については消せないものを選びましょう。
鉛筆や細いボールペンなどを用いた場合、内容を改竄されるリスクが高まるので避けるべきです。
作成方法の流れ
作成の流れは以下の通りです。
- 所有財産の把握
- 財産を特定する資料の準備
- 財産の配分内容を決める
- 遺言書の作成
- 遺言書を封筒に入れて封印する
(1)所有財産の把握
所有する財産について、種類や総額を把握します。その中から、遺産となる財産を選択しましょう。
漏れがないよう、財産目録を作っておきます。目録はパソコンでも作成可能です。
(2)財産を特定する資料の準備
遺言書には財産を特定できる資料が必要です。相続人がきちんと財産を把握できないとトラブルの原因になってしまうからです。
土地ならば登記簿、預貯金なら支店名や口座番号を記載するなどして、第三者が見てもわかるようにしておきましょう。
記載内容から財産特定が不可能な場合は、法務局や銀行が名義変更に応じてくれない可能性も出てきます。
(3)財産の配分内容を決める
相続財産の配分内容を決めます。この時に法定相続人となる人を確認しておきましょう。
被相続人の配偶者は必ず法定相続人となりますが、そのほかは子供、両親、兄弟姉妹と順位があります。
配分割合は各相続人の遺留分を侵害しないようにしましょう。遺留分とは、法定相続人が最低限の財産を得る権利で、遺言書の効力を持ってしても侵害できません。
もし、侵害するような内容だった場合は、相続手続きの手間を増やす他、相続人同士の対立を起こしかねません。無益なトラブルを生まないためにも、しっかり配慮してください。
配分内容を決めたら、相続が円滑に進むように、遺言執行者を決めておくことも大切です。
(4)遺言書の作成
本文は自筆で書きます。
- 日付は年月日で書くこと
- 誰が見てもわかる明瞭な字体で書くこと
- 財産の特定は資料に基づいて正確に書くこと
- 氏名は戸籍に記されている正確な漢字で書くこと
等について記入しましょう。
(5)遺言書を封筒に入れて封印する
封印することは法律上の要件ではありませんが、改竄防止のためにやっておくべきです。
封筒には遺言書が入っていることと、作成者の名前を書いておきましょう。
自筆証書遺言の保管制度
令和2年7月より自筆証書遺言の保管制度が実施されます。この制度は、指定の法務局で遺言書の保管を申請できるもので、紛失・偽造のリスク回避や、相続開始時に家庭裁判所での検認をしなくても良いというメリットがあります。
相続人としても、遺言者の死亡後に遺言書が法務局に保管されているかどうかの照会や、閲覧請求ができるので便利です。
2020年7月以降に自筆証書遺言を作成したり、書き直す場合には、同制度を活用するのも良いでしょう。
作成を専門家に依頼する方法も
自分で遺言書を作成する場合は、実際に書く中で「書き方に迷う」「正しいかどうか不安が残る」といったことも少なくありません。
そのような時は、専門の税理士にサポートを依頼するのも良いでしょう。
報酬は発生してしまいますが、内容のアドバイスはもちろん、保管についての指示も受けられるので、不安は解消されます。
気になる方は一度相談してみてください。
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